赤坂見附駅から徒歩3分、「隠れ家」という言葉がよく似合う、大人が集うフレンチレストラン「EZO(イーゼットオー)」が、誕生したのは、2019年11月23日のこと。
オーナーシェフである前田真吾さんは、北海道の北見市出身です。今回のオープンに際し、様々なジャンルのお店、料理を経験した前田さんがたどり着いたコンセプトは、故郷である北海道の食材を使ったメニューを存分に楽しんでいただこう、という原点回帰でした。
おまかせコースに、ワインペアリングコース、鍋コースにアラカルトと、多彩なラインナップを一人で切り盛りしている前田シェフの北海道愛をたっぷりと伺うことができました。
「私の料理は、何料理というジャンルにとらわれていないのが特長なんです。経験的にはオーベルジュでフレンチの基礎を学び、レストランウェディングの世界にも足を踏み入れました。さらに、弟がイタリアンシェフだったので、一緒にイタリアンレストランを経営したことも。ただ、若いころから料理人なるという考えはブレませんでした。そこには母の影響が大きかったと思います」
お母さまの料理がお上手だったのですね。
「はい、そうなんです。母は仕事もしていたのですが、家にいるときはずっと台所にいて、料理をしていたような記憶です。自分の友達が、なぜか学校帰りにうちに集まって、我が家のご飯を食べて帰るという(笑)友達に母の料理を褒められるのは嬉しかったですね」
料理人としてのキャリアのスタートは、北海道だったという前田シェフ。
「サロマ湖のオーベルジュでした。そこで料理の技術を学びつつ、休日は鮭の定置網漁の手伝いをするなど、北海道ならではの経験を積みました。今思えば贅沢ですよね。朝ごはんは、たっぷりの鮭とイクラがのった丼ぶりだったり。何はともあれ、北海道は食材の宝庫で、じゃがいも、玉ねぎ、にんじんなどは近所の方からいただいていた記憶しかありません」
27歳で札幌に出て、31歳で横浜にと常に新しい活躍の場を広げつつ、キャリアを積んでこられた前田さんですが、33歳の時、ビストロの立ち上げシェフとして赤坂の地に降り立ちます。
「5年くらいの期間でしたが、お客様とかなりコミュニケーションを取らせてもらいました。その後、新宿の方の勤務に移ったこともあり、赤坂を離れましたが、今回の独立に際して“おかえり”なんで声をかけてくださるお客様もいて。こんなにうれしいことはありません」
今回ご紹介いただいた、料理は「カブのスープ」と「菜の花とニョッキのグラタン」の2品。
どれもとても美しく、色鮮やかで食べるのが惜しくなるほど。
「まず、カブのスープですが、昆布の出汁とかぶを合わせ、バターと塩で味付け。そこにクレソンのピュレをのせ、桜鱒といくらを添えました。まさに北海道をわかりやすく感じていただける一品になっています。つぎに、グラタンですが、ニョッキには北海道の北あかりとズワイガニの身を練り込みました。そして、ホタテ、菜の花とともに仕上げています」
聞けば聞くほどワクワクしてしまう、料理なのですが。
「やはり、レストランで楽しんでいただくというのは、非現実的でありたいなと思っています。同じ野菜でも手間ひまをかけて一皿を作ることがプロの仕事だと思っているので」
前田シェフの考える野菜の魅力を伺ってみると、
「じゃがいもや人参、たまねぎは火を入れることで、美味しいスープも出ますし、もちろんそのまま食べてもおいしい。野菜を使うことで肉料理や野菜料理にも丸みが出ますよね。ほんとうに料理にとってなくてはならないものだと感じています」
カウンター6席、テーブル個室4席、座敷個室8席という、落ち着いたレストラン。
前田シェフのオリジナル料理を通じ、北海道の素材の魅力を一層感じることでしょう。