三軒茶屋から下高井戸を繋ぐ東急世田谷線の「松陰神社前」駅から、徒歩30秒の場所に、凛とした店構えでたたずむ、「Boulangerie Sudo（ブーランジェリースドウ ）」。
今年で開業10年を迎えるこちらのお店、営業日は毎朝お客様が列をなし、予約販売の食パンは、あっという間に予約が埋まってしまう、いわずもがなの大人気店です。幼少期から何かを作ることが大好きで、パティシエ時代に「焼き菓子とパンのお店で独立したい」という想いを持ち、そのままの夢を叶えられた、オーナーシェフ須藤秀男さんにインタビュー。
お話から、須藤シェフがいかにおいしく作ること、おいしく見せることに真摯に向き合っているかが伝わってきました。
須藤さんの作り手として、そしてお客様に魅力的に商品を届けるという想いの原点は、お母様の影響が強いそう。
「母親が、料理がとても得意だったので、よく一緒に手伝ったりしていたのもあってか、幼いころから作ることが大好きでした。加えて、自身で料理をのせる食器を作ってしまうほど、いかにおいしく見せるかということにもこだわる人でした。食事をどんな見せ方かをするかによって、まず“おいしそう”という第一印象を与えますよね。そんな食卓で育ってきているので、同じ感覚は持っていると思いますね（笑）」
専門学校に入る際は、和食、洋食、製菓部門のすべての体験コースを見たとのことですが、その中から製菓コースを選んだからこそ今があるわけですね。
「はい、全部を見た上で製菓を選びました。現在は、ブーランジェリー経営をしてますが、学校卒業後は、パティシエとしてパティスリーに勤務しました。そこの店舗は、焼き菓子がとても豊富で、さらにはパン製造も経験し、将来の目標が見えてきたというのがありますね」
その後は、数々の有名ブーランジェリーを経て、2009年に満を持して独立を果たします。
「下町っぽい、のんびりした場所がいいなと思っていたら、この物件と巡りあいました。元々この近くに住んでいたこともあり、土地勘があったのも決め手でした。オープン10年ですが、まだまだお客様のご要望に応えられていないと思っていますので、一層製造強化を図っていきたいと思っています」
「うちのお店は、レストランではないので、その場で召し上がっていただくわけではありません。でも、パン屋さんだけれども、季節感を感じていただきたいという想いが強いので、旬のフルーツや野菜を使うようにしています。しかし、パンは常温保存のため、野菜などが時間を経た時の色味の問題や鮮度を意識して商品開発をしています。当店では人気メニューの“豪快タルティーヌ”で野菜が主役級に目立っていますね」と須藤シェフ。
近隣の方で当日食べる分だけを購入できる方はいいけれど、多めに買って明日食べよう、遠方から来訪した方で、冷凍して別日に召し上がる方もいらっしゃることさえも須藤シェフは視野に入れているそうです。
「レストランのようにその場で召し上がっていただけないですからね。私は常にリベイク（焼き直し）して召し上がっていただくことも想定して、商品に向き合っています」
近年は、野菜やフルーツの種類も増えています。日々忙しい須藤さんの情報収集はどんなところから得ているのでしょうか。
「そうですね、もちろん自分の知人などの人脈からの情報に加え、飛び込みでいらした営業の方の情報も大切にしています。そして、大田市場に拠点を持つマチルダさんのように野菜・果物の生産者の方と直接やり取りをしている八百屋さんはやはり頼りにしていますよ。今までは輸入物だったフルーツを国内で作っている方がいることも、コミュニケーションから知るわけで。そのため、気になったことはどんどん聞くようにしています。どんな方向からの情報も大切にすることで、納得のいく野菜やフルーツを仕入れるとこができ、その結果、おいしいパンが生まれるのです」
須藤シェフの多方面からのこだわり、そして貫く強い意志こそが、10年間大人気店であり続けていることの証明であるように思いました。
