1973年創業の、My Room雲母(きらら)は、1日に7組のお客様をお迎えできる炭火焼のお店です。創業当時は六本木のカウンタースタイルのお店がスタートだったとのこと。
その後、広尾に移転し大人がゆったりと楽しめる炭火焼のお店として知る人ぞ知る名店になりました。看板もメニューも出ていないお店には、顧客の紹介にて来店するというスタイルが定着し、先に訪問した方は焼き方の伝授をするなど、人と人との繋がりをとても大切にしているお店。
現在は、2代目オーナー小林朝日里さんとともに、奥田浩行さんが店長としてお店を取り仕切っています。
「来店客が100%オーダーする“野菜の炭火焼”は季節によって、盛り合わせ内容が変わるものの、ピーマン、玉ねぎは常連メンバーとして愛されています。その中でも特に人気があるのが、ピーマンなんです。今までピーマンが食べられなかったという方や、苦味が嫌いと言う方が『ここのピーマンだけは食べられる』『ここで食べてから食べられるようになった』など、うれしいお言葉を頂戴しています。」と、奥田さん。
どうしてそんなにおいしいと感じるのでしょうか。それはどうやら焼き方にポイントがあるようです。
「よく家庭での焼肉やBBQの際など、ピーマンは焦げて隅に追いやられたり、シナシナになっていたりとあまり丁寧な扱いを受けていないように思います。当店では、まず表面部分を上にしてドーム型の状態で、じっくりと水分を閉じ込めます。その後一度だけひっくり返し、お腹の部分に水分(汗)が溜まったタイミングが食べごろ。何度も裏表させることはありません。」
この作法により、ピーマンの旨みが最大限発揮できるのだそうです。
奥田さん曰く、
「同様に玉ねぎやマッシュルームなども同様の焼き方で水分を閉じ込めるのですが、マッシュルームに至ってはまさに小籠包の肉汁のように旨みのスープがあふれ出てきます。私も最初に体験した時は、感動したものです。」
もちろんメインの魚・肉も充実しているのですが、炭焼野菜のおいしさでお客様の心を魅了するお店はとても貴重だと言えます。
「雲母の黒炭は、岩手産の楢木(ならのき)を使用しています。火がつきやすく、安定した火力を保つことができるからです。」と、奥田さん。
黒炭によっても様々な個性があり、その特徴を熟知した上で、選んでいるという点も炭焼きへの愛情を感じます。
炭火がおきるまでの工程を伺うと、
「まず、専用の七輪で10分ほどかけて種火をおこします。その後、席の囲炉裏に入れてじっくり火をおこしていきます。その炭を置く際に、注意点があるのです。炭と炭の間には、バランスよく隙間を作る必要があります。なぜならば、近づきすぎると消えてしまうから。風通しをよくする距離というものが必要なんです。さらに、種火の火入れにもポイントが。あまり火力が上がりすぎると炭は一気に燃え上がり、燃え尽きてしまいます。ゆっくりじわじわと火をおこすことが長く続く秘訣なんです。これは、まさに人間関係、恋愛にも通じることではないでしょうか」と、深いいお話をいただきました。
自然の摂理にきちんと向き合うと、私達へ向けたこんなにもわかりやすいアドバイスが!!
炭火を見ていると心が落ち着く理由が分かったような気がします。
9月からは、秋の味覚“さんまの土鍋ごはん”、10月からは“炙り古白鶏のきのこ鍋”もスタートするとのこと。
野菜の炭火焼を堪能した後のお鍋や〆ご飯もおすすめです。