オーストラリア料理専門店「64 Barrack st. Australian Wine Dining」がオープンしたのは、2017年12月15日。
場所は、虎ノ門ヒルズからほど近い、いわゆるビジネス街です。
「“オージービーフの知名度は抜群ですが、そもそもオーストラリア料理って?”と思われる方は多いかもしれませんね」と笑顔でインタビューに応えていただいたのは、ヘッドシェフの白井正樹さん。
料理をすることが大好きだったにもかかわらず、一度は違う世界に身を置いた経験を持つ白井さんにたっぷりと料理への想いを伺いました。
「そもそも、うちの父親が料理人ということも影響してか、昔から調理をすることが大好きでした。一度、中学生の時に父親の勤務先で食べた料理に感動して、自宅で教わりながら再現したことがあったんです。その時に自分なりにですが同じ味に近づけた実感があり、“あっプロの味が出せた!!“と(笑)。その感動体験はいまでも忘れていませんし、学生時代のアルバイトもすべて飲食、ホームパーティなどで腕をふるまうことも楽しかったです」
しかし、大学を卒業後は、調理の道に進まなかったんですね?
「そうなんです、その時の自分にはプロとして一歩踏み出す勇気がなかったのだと思います」
サラリーマンとして6年間営業の仕事についていたものの、29歳の時に“自分の好きなことをやりたい”とついに調理の道へ。
「はい、遅いスタートでした。周りは19、20歳くらいの仲間に囲まれながらのスタートでした。しかも、初めて勤務したビストロ店舗のシェフが帝国ホテル出身ですごく厳しかったですね。おかげで基礎は十分にしごかれました」
その後、スペイン料理、ビストロなどの店舗で腕を磨いていた白井シェフ。
そんな折、お父様のかつての同僚が、オーストラリア料理店をオープンするからシェフを任せたいという話が飛び込んできたと言います。
「はい、こちらの代表は食で日本とオーストラリアの架け橋となるべく、オーストラリアで和食店を経営していて、オーストラリアに大変思い入れのある方。今度は日本にオーストラリア料理店をとの想いでプロジェクトを立ち上げるタイミングで私にお声がけをいただいたんです」
オープン前にパースでオーストラリア料理の研究に勤しんだという白井シェフ。
「本当に、オーストラリア人がめちゃめちゃ野菜を食べることに驚きました。それまでは、どうしても肉食のイメージが強かったんですが、とんでもない量のサラダをペロリと召し上がる方ばかり。そこで、サラダケールの人気も目の当たりにしたんです。帰国後さっそく、マチルダさんにサラダケールの相談に行きましたね。オーストラリア野菜の輸入はなかなか進んでいないことから、国産の美味しい野菜でオーストラリア料理を構築していくことにしたんです」
今回、シェフが作ってくださったケールサラダ(ディナーサイズ)はオープン時からの人気メニュー。
ランチタイムには、セットサイズで提供しているというのですが、なんとお客様の中には、
お金を払うのでディナーサイズで食べたいとおっしゃる方もいらっしゃるとか。
「しかも、男性に多いんですよ、サラダをたっぷり食べたいという方が」と白井シェフ。
そして、もう一品ご紹介いただいたのは、根菜がたっぷり入っている野菜のロースト。
「この野菜のローストは必ず頼まれるリピーターの方がいらっしゃいます。野菜の甘みをすごく実感できる一皿です」
実は、野菜好きの白井シェフが特に好きな野菜は、根菜とのこと。
そもそも、御父上が、千葉で畑をしていたということも、シェフの野菜に対する思いに大きな影響を与えていたようです。
「そうなんです。父親が手塩にかけて作ってくれた野菜の味に濃さに驚いたのも思春期でしたね」
オープンからようやく1年とちょっとが経ち、オーストラリアに縁のある方々の来店も増えてきているそうです。
「オーストラリアワインは80種ありますし、オージービーフ、ラム、サーモン、そして、塩やハチミツ等の調味料もオーストラリア産です。広大な自然の中で育まれた食材を楽しんでいたけると幸いです」
そして、その先には大きな夢を持っているそうで、「食を通じて困っている世界の人々を幸せにしたいんですよね」という、白井シェフ。
本当に好きなことだからこそ、どこまでも前向きでいられるのだろう、と感じたインタビューでした。