生産者の声
マチルダ生産者

星農場
星 達哉さん・綾子さん

星農場 / 星 達哉さん・綾子さん

今回ご紹介するのは、宮城県・南三陸で小松菜、カリーノケール(以下:ケール)を生産している星農場の星ご夫妻。訪問時の農場はケールの最盛期、グリーンカラーが輝くハウス内でお話を伺いました。(訪問は2025年6月)
星農場 Facebook  https://www.facebook.com/minamisanriku.hoshifarm

■メイン野菜は、アブラナ科の小松菜&ケール

「うちの達哉さんは、アブラナ科の栽培が得意なんですよ」と、はじけるような笑顔で畑へ案内してくれたのは、奥様の綾子さん。ハウス栽培は、現在、小松菜40棟、ケール20棟。さらに、小松菜の露地栽培も行っているほか、春菊・ほうれん草・菜の花・ルッコラなども季節ごとに栽培しています。

営業担当でもある綾子さんは、なんと震災後3年目に移住してきたと伺い、まずはその人生についてお話を伺いました。
「わたしの出身は埼玉県で、東日本大震災が起きたあと、ボランティア活動で訪れていた南三陸町が大好きになり『ここに骨を埋めたい』と考えるようになりました。そして、会社員時代からの夢であった農業とご縁のあった町内の農業法人に就職したんです。その時に『農家の嫁になりたい』と口に出し続けていたんですね。農家のお嫁さん不足ということもあり、『うちの息子はどう?』などと、間接的に色々な方から声をいただきましたよ(笑)」と、綾子さん。

その後、農業法人を退職し新規就農の道を選ぼうとしますが、やはり個人で農業を営む難しさに直面し、体調も崩したそう。そんな折、星さんとの出会いに恵まれ2021年に結婚、晴れて農家のお嫁さんに!
まさに、農家のお嫁さんが天職だということがわかるほど、野菜愛が溢れて伝わってきます。

星農場の代表・星達哉さん

「うちの主人は少しシャイなんですよね」と話されていると、星農場の代表・星達哉さんが登場。さっそく、星さんの農業人生のスタートを伺います。
「私は2008年に脱サラし、茨城の農業学校で学び、2009年に地元に戻り就農しました。現在の主力作物は小松菜とケールですが、ケールの栽培を始めたのは5年前です。ちょうど結婚した当初からですね。同じアブラナ科ということもあり、設備を大きく変えなくてよいというのも魅力でしたし、毎年2〜3種類の新しい野菜に挑戦する中で、ケールの出来が良かったことから、本格的な栽培に至りました」

星 達哉さん・綾子さんと星農場のケール

「実は、体調を崩していたときに、からだの内側をケアするということへの意識が高まり、色んな野菜の性質を知っていく中で、ケールの栄養価のすばらしさに気が付いたんです。さらに、東京でケールが流行っている情報をみて、これはこの先もっと人気がでるに違いないと確信をもっていたんです」と綾子さん。

星農場のケール
奥様の綾子さん

今では、綾子さんがケールの魅力を伝えるために学校現場にも出向いているそうです。
「ケールの魅力についてなどをお話するために、学校にいきお話をさせていただいています。給食現場の栄養士さんもケールファンになってくれたので、給食でケールのパスタなどが出されていますし、年間1000名の中高生が農業体験に足を運んでくれるようになりました。みんな種まきや、収穫体験を楽しんでくれているのがとても嬉しいです」

さらに、道の駅などで直接販売しているパッケージに、インスタのQRコードを記載しているので、お客様からの声がダイレクトに届いているといいます。

「驚いたメッセージは、旅の途中のオーストリア人の方からですね。その方は、世界中のケールを食べているほどのケール愛好家なんだ!ということを伝えてくれた上で、10日間の滞在中に15パックも買うくらいファンになってしまったと、メッセージをくれました」と綾子さん。

星農場のケールファンの方で、通販を希望される方には、定期購入の場合のみ受け付けているそうです。

さて、そんなケール愛の深い、星ご夫妻はご自宅でケールをどんな調理スタイルで?と伺うと、
「煮びたし、炒め物、ナムル、スープなど、何にでもいれますね」と星さん。
実は、星さんが開発した、小松菜とケールのナムルのレシピが好評で、あるメーカーさんのメニューに選ばれたくらいなんだとか。

綾子さんは、毎朝かならず、ケールとたまごを挟みマヨネーズをかけた、ケールサンドだそうです。

■五感で楽しめる観光農園「香彩園」を目指す

「香彩園(こうさいえん)」というバジル

「こちらのバジルは、すでに、出荷用として栽培はしていますが、もっとハーブの種類を増やし本格的なハーブ園を完成させたいと思っています。香りが彩ると書いて、『香彩園(こうさいえん)』というネーミングで。まだまだ試行錯誤していますけれど、必ず観光農園としての形にもっていきます!」と綾子さん。きっと、また有言実行パワーで完成させるに違いありません。

■ハウスで使用する土はオリジナルの配合で

星 達哉さんと5つの素材を配合した土づくり

「うちの畑では、独自で資源循環をおこなう素材を土に配合しているんですね」と星さん。今の状態になるまでには10年の試行錯誤の土づくりがあったとのこと。

「この5つの素材が土づくりの原点になります。まず、1)もみ殻を炭にしたもの。そして、2)ブランド杉でもある南三陸杉の皮を3年かけて発酵させたもの。そしてカルシウム吸収率が速い細かく粉砕されている、3)牡蠣の石灰。じっくりと土に入っていく粗めに粉砕された、4)ホタテの石灰。最後にうま味成分を含んだ5)乾燥したメカブの茎です」

牡蠣の石灰、ホタテの石灰

「これをオリジナル堆肥としてブレンドしたものを畑にまいたり、直接畑にまいてトラクターで耕し、土に混ぜ込んでいく方法をとることもあります。この土こそが、ケールを同じ株で1年1か月育て続ける秘訣でもあるんです。このエリアには、海・山・里と、あらゆる自然環境がそろっています。それら自然の恵みから得られる養分が、土の栄養となっていくのです。この手法は特に受け継がれたものではなく、達哉さんが皆さんのお力添えのもと、独自に研究・開発したものなんですよ」と綾子さん。
「そもそも、津波によって多くの集落が流されたこの地域は、土の中に石が多く、農地としては決して好条件とはいえません。それもあって、手間暇をかけた土づくりが野菜の生育にとって非常に重要であり、結果として出来栄えや味の良さにもつながっていると感じています」と星さん。

星 達哉さん・綾子さん、星農場のケール

今では、農業経験がまったくなかった星さんのご両親を含め、18名が星農場を支えているといいます。
「パッキング作業だけをお願いしている内職の方から、トリプルワーカーとして収穫を手伝ってくださる方、8名の小松菜専任スタッフ、そしてケールチームまで、地域としては活気のある農場だと思います」と綾子さん。
やはり震災後には多くの雇用が失われ、この地域を離れた方々も、なかなか戻ってきてはいないとのこと。
「土地に関しては、県の方などから『農業を廃業される方の土地を使いませんか?』とお話をいただいたり、中古のハウス移設案件をご紹介いただくことも増えてきました。まだまだ若い世代ということもあり、農業界からの期待も大きいのだと思います」

星農場 / 星 達哉さん・綾子さん

最後に、これから挑戦したい品種について伺いました。
「イエルバブエナ」というモヒートに使われるスペアミントの一種です。香彩園の充実を図るとともに、近年需要が高まっているモヒート用ミントの安定した栽培と出荷を目指していきたいと思います」とのこと。

星ご夫妻のお話を伺っていると、農業に対する責任感と、真摯に取り組む姿勢がひしひしと伝わってきました。日本の農業には、まだまだ明るい未来が期待できそうです!

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