生産者の声
マチルダ生産者

株式会社FENNEL
代表取締役社長 森田 剛史さん

株式会社FENNEL / 代表取締役社長 森田 剛史さん

今回ご紹介する、株式会社FENNEL(フェンネル)は、さいたまヨーロッパ野菜研究会の生産者法人で、2013年にさいたま市内の若手生産者とレストランが連携して設立されました。現在、約20名の生産者が所属し、年間70種類以上のヨーロッパ野菜を全国に届けています。参画している生産者は、さいたま市内で露地やハウス栽培を行う専業農家として、それぞれ農業を営みつつも、法人としてヨーロッパ野菜の生産スキームを構築しているのです。代表取締役社長である、森田 剛史さんにお話しを伺い活動拠点をご案内していただきました。
株式会社FENNEL  https://fennel-saitama.co.jp/

■東京市場への近さもこのエリアの強みのひとつ

インタビュー当日、都内から1時間弱で畑に到着したことにも取材班も驚きです。
「荒川を超えたら、すぐなんです。この近さがより鮮度を保って都心へ出荷できる強みでもありますね」と森田さん。
まずは、早速イタリア野菜「チーマ・ディ・ラーパ」の畑へ案内いただきました。

「チーマ・ディ・ラーパ」の畑と森田さん

こちらの野菜は、茎と葉、つぼみを食用するイタリアの冬野菜です。ほのかな苦みが特徴で、イタリア野菜の人気とともに国内での生産者も増えてきています。

「弊社では、茎もつぼみも食べられるところは全部だします。収穫はハサミで、20センチほどの茎と食べられる葉の部分をつけて出荷しています。24年度は12月から寒くなったので、今がいい感じに収穫できています。(取材は2月上旬)
暖かくなると花が咲き、やはり収穫時期が早まるので、今年はありがたいですね。22年度、23年度は気候がとても暖かく、早い時期に7割ほど花が咲いてしまいました。」

森田さんは、チーマ・ディ・ラーパを、1ヘクタール栽培しているとのこと。その魅力を教えてください。
「生産という意味では、色々な野菜がある中で、わたしとの相性が良かったということにつきるかもしれません。野菜としての魅力は、料理への汎用性が高いということです。
下ゆでして再加熱する料理がおいしさを引き立てるのですが、1本でお肉の付け合わせにもなりますし、菜花という点ではからしとの相性もよく、おでんにもピッタリなんです。本場ではドロドロになるくらいゆでて、オリーブオイルと塩とレモンで食べることが多いですね。魚介との相性も良いので、一緒にパスタに入れるのも最高です」とアイデアが次から次に。それもそのはず、森田さんは実家の農業を継承する以前、和食の調理師としての経験を積んでいたのです。

イタリア野菜「チーマ・ディ・ラーパ」

今年度は、11月~2月末まで4か月ほどが収穫時期。それぞれのタイミングで少し味が変化するそうで、試食させていただくと、苦みの中に、野菜の甘さを感じました。
「2月に入ると少し甘みが強まってきていると思いますね。4か月でトータルで3トン程度の出荷量です」

■ケールの人気が一般家庭にも普及

ハウスで栽培されているケール畑と森田さん

次に、ご案内いただいたのは、ハウスで栽培されているケール畑。夏になると露地栽培に移行していくとのことです。森田さんの畑では、ケールの旨みを出すために、窒素分をカットするなど栽培方法にこだわっているそうです。

「近年、ケール人気が高まってきていることを実感しています。FENNELの野菜は、2年ほど前からイオン浦和美園店でも一般のお客様に販売しているんですね。その中で一番人気が高いのが、ケールなんです。出荷がないと、お客様からクレームが入るほど、認知されてきたというのがうれしい悲鳴です。ケールの生産力をあげるには、栽培する農家さんを増やす必要があるんです」

冬のケールの栽培が終わり次第、こちらのハウスでは、花ズッキーニの栽培が始まります。
「こちらもハウスでスタートし、露地栽培へ移行しています。うちは、花ズッキーニ専門で栽培をしています。その日咲いた花はすべて収穫するスタイルで、早朝4時に収穫し、ずっと冷蔵の中で、霧吹き→冷却→ティッシュ詰め→霧吹きという工程を行います。そのため、圧倒的に花もちがいいですね。1週間はもつのでシェフたちが驚いてくれるほどです」

ほかにも、7月~9月に収穫される「ダビデの星」というオクラは、森田さんの夏の風物詩。7~8年栽培しているそうで、こだわりを伺うと
「7~9センチが一番おいしいですね。10センチを超えると固くなり、ジャリっとしてしまいます。3000~4000本植えて、1日1000本程度の収穫です。とにかくデリケートなので、水分や温度調節などケアが大変です。枝が3~4メートルの高さになるのですが、高くなったものは引いて倒して収穫しています。樹がしなやかなので倒しても折れずに放せばもとにもどります」とのことです。

■JA内の出荷場には、高性能な真空冷却器が2台

JA内の出荷場の様子

「弊社の出荷場はJAさんの中にあります。ここから農協さんの協力のもと週に5回出荷させていただいています。JAさんのお力添えがあるからこその部分は大きいですね。葉物は真空冷却をかけることで鮮度が保てるのですが、その機器が2台も投入されているんです」と森田さん。

JA内の出荷場にある、高性能な真空冷却器

JAの方に伺うと
「12月~2月の3か月を除く9か月間はフル稼働で動いています。目的は、野菜の熱を瞬間で取り除くということ。その作業をすることで、その後の野菜のもちが格段に違ってくるのです。だいたい5度の設定で、15分~20分で冷却されます。真空もかかるので、出てきたときは縮んでいるのですが、すぐに戻っていきます。これほど大型のものを2台持っているというのは、JAでは珍しいほうだと思います」とのこと。

■FENNEL独自のブランディング

出荷場にいると、様々な生産者が野菜をもってやってきます。
その荷受けをみていると、野菜ごとにとても素敵なシールが付けられていることに気付きました。素敵!と感じた理由は、そのメッセージにあります。
この野菜を手に取ったシェフも一般の方にもとても具体的なイメージがわく自己PRになっているのです。スーパーの野菜売り場で「幸せなゴマの香り」というキャッチを目にしたら、購買意欲が上がるのは容易に想像できてしまいます。

スーパーの野菜売り場にて、素敵なメッセージが添えられた野菜
新鮮な野菜のイメージそのままの、愛情が感じられるロゴデザイン

そして、見ていて気持ちの良いロゴデザインにも注目です。
「このロゴデザインは、弊社メンバーのところで働いているスタッフが考案してくれました。特にデザインのプロにお願いしたいというわけではありません」
新鮮な野菜のイメージそのままに清潔感があり、愛情がこもっていることが感じられます。

生産者メンバーとの作付け会議などはどの程度行っているのでしょうか。
「年に2回春と秋に作付け会議を行います。その前に、春は1月~聞き取りを開始、秋に関しては、7月頃から聞き取りを開始します。そして、生産スケジュールを構築していくというスタイルです」と森田さん。代々続く農家として、小松菜などの一般的な野菜も生産しつつ、ヨーロッパ野菜という分野に着目し、現地視察なども行いながら、仲間と一緒に試行錯誤を続けてきた森田さん。ヨーロッパ野菜生産者として、レストランシェフたちからも頼りにされる存在になっています。

FENNELで生産された、ヨーロッパ野菜

後編では、取締役副社長の木村彰宏さんの畑とともに、FENNELの野菜がたっぷりと食べられる「ヨロ研カフェ」のご紹介も行います。

マチルダでご紹介した生産者の声