茨城県鉾田市にある、有限会社大洋まほろ馬農場では、幅広い種類のハーブ栽培を行っています。この会社の創業は、1999年3月。もともと都内で料理人をしていた、先代の立ち上げから始まっていました。今回は、息子として後を継ぎ、8年前から代表取締役を務める円谷俊介さんを中心に様々なお話を聞かせていただきました。
HP
http://mahoroba.farm/
まずは、こちらの会社の成り立ちを簡単にご紹介ください。
「この会社は父が40代から始めた事業なんです。家系は福島の農家だったのですが、父は、料理人として銀座で勤めていました。ただ、当時のハーブなどはほとんど輸入品で、納得できる品質のものがなかったようで。それなら自分で作ってしまおう!と、ハーブ栽培へ舵をきったんです。そのあとは、ハーブガーデンや海外にまで研修にいくなど、精力的に動きはじめました。私が中学生ぐらいのときです」
思いついてからの行動力がすごいお父様ですね。
「本当にびっくりです。過去の経験がないというのは、むしろ強かったんだと思います。ふつうは~とか、今までは~がないので。そして、耕作地としてあいていたこの場所で、ハウス一棟からスタートします。それからは、自分だけではなく、周りの農家さんを巻き込もうと、日々口説き始めたとのことでした。今までメロン農家さんだった方に、ハーブの生産について語り、そのための土壌造りなども説明し、売り上げから利益をだすという、経営の意識をコミュニ―ションの中で作り上げていったそうです」
移住者で、しかも農業経験が浅い状況で農家さんを口説く営業力は、円谷さんのお話のうまさに引き継がれていますね!
「毎日、飲みながらコミュニケーションをとっていたみたいですね(笑)。自分たちだけ良ければいいという考えは父にはなくて、大洋村全体が底上げされることを目指したといいます」
円谷さんが、後を継ぐという考えをもったのはいつ頃なんでしょうか。
「そうですね、大学時代に定期的にアルバイトとして、出荷作業を手伝うようになった時、ハーブに癒されている自分に気が付いた時ですね。で、その後に農業の勉強をし、営業を経て会社の経営に携わるようになりました。そんなタイミングで父があと半年で席を譲ると言い始め、それからはあっという間でした。会長になるかと思いきや、潔く退き、福島へ戻っていきましたね。驚きました」
就任後は、どのような体制にしていったのでしょう。
「まずは、今まで以上に環境を整えようと新社屋をたて、ハーブを作る上での農業系の国際認証を取得するなど、ハード面とソフト面の両面からアプローチをしました。でもその中で、コロナ禍をはじめ、様々な困難もありました。ですが、いつも人に助けられるなと実感しています」
現在は、どのくらいの外部協力生産者がいらっしゃるのでしょうか。
「外部協力生産箇所は、4箇所からスタートしたのですが、今では全国で32箇所、北海道、青森、沖縄などもあります。昨今の気候変動もあり、茨城ではうまく生産できないハーブなども出てきていますので。ハーブごとの特性にあった地域のプロの方に生産をお願いするということが、品質を守ることに繋がるんです。そもそもハーブは古くから薬草、香草として自生していて、むしろ人類よりはるか前より存在していた可能性もあります。そんな生命力があるハーブは、自生に近い天然の気候に近いほうが香り豊かだと思います」
「料理人だった父は、『品質がすべて』を口酸っぱく言ってました。その思いは繋いでいます。レストランのシェフの声を聞き、どんなハーブが必要かというのは常に念頭に置いています。ただ、時期的に国内だけで生産がカバーできない際には、ケニアや、イスラエルの輸入ハーブもご提案できるようにはしています。弊社はプロ向けという意識があるので、レストランに対しての欠品は避けたいので。意外かもしれませんが、土壌バランスも水はけもよい、ケニアやイスラエルはハーブ生産の環境に適しているんです。そして、料理にもたくさんハーブを扱うので、日常で消費されるので生活に溶け込んでいるんですね。イスラエル訪問はありますが、ケニアには行ったことがないので、ぜひ行きたいと思っています」
会社を支える、もう一人の円谷さんはハーブハウスにいました。生産部 部長の円谷洋平さんです。「兄が代表になったタイミングでわたしも入社することとなりました。農業未経験からのスタートでしたが、もともとスポーツをやっていたからでしょうか。体力的には問題なく就労できていますね」と笑う、自社ハーブ生産を担っている、円谷洋平さん。
外部のプロの生産者さんと円滑な交渉を行うことが、企業の成長に繋がっていることは間違いありません。
「協力農家さんがもともと作っていた野菜なども販売ルートに乗せていこうと思っています。レストランに向けても、ハーブのほかに、レモンやトマトも同じ便でお届けしますよという流れは、助かるかなと思っています」と、営業の日向寺秀人さん。
「『まほろば』には古語の“いいところ”という意味が含まれているんです。社名に入っている「馬」の文字についてですが、弊社は、馬糞堆肥で土壌を作っているからなんですね。馬糞は、臭いもあまりないですし、エサの管理もしっかりされているので状態がとてもいいんです。よい土壌が作れるんです。そして、大洋村からスタートしたので、大洋のワードも残し、太陽マークも使用しているんです」とのこと。
具体的に描いている、今後の目標などはあるんでしょうか。
「3haが自社、全国の協力生産者さんで22haという敷地で、60品目以上を栽培しています。しっかりと商品として納品先が決まっているもの以外にも思い付きで、栽培をスタートさせているものもあるんです。せっかく農業に携わっているので、新しいチャレンジもしていきたいんですよね。クレソン、ワサビなどもやってみたいなと思っていますし、わたし自身アロマも好きなので、ハーブからアロマへの参入なども視野に入れています。お客様にニーズを探りつつ引き出しをいくつも持っていたいと思っています」と話す代表の円谷さん。
一緒にいる皆さんのリラックスした様子からも、企業にあふれるエネルギーが感じられました。