生産者の声
マチルダ生産者

青葉ファームランド合同会社 代表社員 三堀泰広さん

青葉ファームランド合同会社 代表社員 三堀泰広さん

神奈川県横浜市青葉区鉄町にある「青葉ファームランド」では、ビニールハウス内でシイタケ栽培がおこなわれています。こちらの施設では、障がいのある方に働く場を提供する「就労継続支援B型」を取り入れています。脱サラを経て、独立開業に踏み切ったのは、代表社員の三堀泰広さん。「37歳からの挑戦でしたが、農業の知識がなかったのがよかった気がします」と、これまで経験した数々の苦難についても、笑顔を交えながらお話しいただきました。
青葉ファームランド

■青葉ファームランドを始めるきっかけは震災

「社会人になってから12~13年、サラリーマンとしてトレーラーを運転していました。考え方に大きな変化があったのは、あの2011年の東日本大震災でしたね。人生というものに強制的に向き合わされましたし、仕事というものについても深く考えるきっかけになりました。様々な要因も重なり、今後は“食に携わる仕事”をしていこうと、方向転換を決めました」

三堀泰広さん、ビニールハウス

食といっても様々な職種がある中で、この道に進むことになった理由を伺うと――。
「はじめは、紹介された居酒屋で働き始めたんです。3年ほど魚を捌いたりしていました。そんな中、たまたま栃木県宇都宮市で、ビニールハウスを使ってシイタケを栽培しながら、障がい者雇用に取り組んでいる会社があることを知りました。それを見て、『これなら神奈川でもやれるのでは!』と思ったんです。幸い、実家が兼業農家で農地を持っていたものですから」
ちょうど、国としても農福連携の「ノウフク」を推進し始めた時代。
「もっと簡単にスタートできるものだと思っていました。シイタケ栽培は小規模からでも始められるのが魅力でしたし、気候に左右されず、通年でできるのもいいなと。ところが、ビニールハウスの準備のために銀行へ資金繰りの相談に行っても、まったく相手にされないんです。そこで、深夜帯に青果市場で働きながら、帰宅後はシイタケ栽培をなんとか成功させようと、実家の小屋を活用して必死に取り組みました」

就農して今年で11年、福祉事業をスタートしてから8年を迎えます。
「現在は26名の方が登録されており、日々15~16名ほどが作業に参加してくれています。事業を始めた当初は、わずか3名からのスタートでした。現在の体制が整うまでには、さまざまな苦労もありましたが、一つひとつ乗り越えながら、少しずつ今の形を築いてきました。
私たちが大切にしているのは、皆さんがその日の業務を笑顔で終えること。それが弊社の指針ですね」

■ハウス内は最大25000の菌床が並ぶ

三堀泰広さん、ビニールハウス内のシイタケ栽培の様子

ビニールハウスの中を覗かせていただくと、そこには菌床がずらり。まるで焼き上がったパンが工場内に整然と並んでいるかのような光景で、そのスケール感はまさに圧巻でした。
「現在、菌床は森産業さんのものを使用しています。森産業さんは原木栽培からスタートされていることもあり、シイタケ本来の味がしっかりと感じられるんです。そこに魅力を感じて、選ばせていただきました。
契約している菌床は、小田原で約1か月かけて成長させた後、5℃ほどの低温状態を保ちながら、こちらのハウスまで運んできています」と三堀さん。

吉田博史さん、菌床の様子

「こちらに運び込んでから約2か月間生育させ、3か月目に袋を破ります。小田原から到着したばかりの菌床は、このように白いのですが、熟成が進むにつれて、次第に茶色へと変化していくんです」
そう説明してくださったのは、吉田博史さん。菌床の色の変化を実際に見せていただきながら、シイタケが育つまでの工程を丁寧に教えてくださいました。

菌床の様子

「収穫までの周期は、およそ10日です。4~5日ほどで芽が出てくるので、そのタイミングで間引きを行います。そこからさらに3日ほど成長を待って、いよいよ収穫です。ひとつの菌床から収穫できる量は約250g。通常サイズで16~17本ほどになります。
収穫を終えると、菌床は一旦“お休み”に入ります。6時間ほど水に漬けることで菌が再び活性化し、またシイタケが育ち始めるんです。ひとつの菌床で最大5~6回収穫できますが、回数を重ねるにつれて、どうしてもシイタケは小ぶりになっていきます。
ただ、小ぶりなものはマッシュルームのような感じで、茎の部分まで柔らかいんですよ。最近では、あえてこの小ぶりなサイズを求めてくださるレストランのシェフもいらっしゃいます」と吉田さん。
なお、2回目以降は、回数を重ねるごとに収穫までの周期も少しずつ長くなっていくそうです。

菌床の様子

「弊社では、バラで出荷するものには大きめのシイタケ、パック商品には通常サイズ、そして一般流通には載せにくい小粒のものは、それを好んでくださるシェフへと、サイズや特徴に合わせて多方面にアプローチしています。そのため、ほとんどロスがないんです」と三堀さん。さらに、生シイタケとしての出荷だけでなく、乾燥機も活用。乾燥シイタケやだしパックなどへの加工も行い、収穫したシイタケを余すことなく生かしています。

出荷されるシイタケ、乾燥シイタケやだしパックなどの加工商品
三堀泰広さん

「働く場所の提供という面でも、食材という面でも、地元に還元していきたい」そんな思いを強く持つ三堀さん。その視線は、すでに次のステージへと向けられています。
「今後は、自社で菌床を作ることを計画しています。それが実現すれば、生産量は現在の3~4倍になる見込みです。規模が大きくなれば、これまで以上にさまざまな方々のお力をお借りすることになると思います。地域の皆さんと一緒に成長していけたらうれしいですね。ぜひ、応援してください」
福祉と農業をつなぎ、人の働く場所を生み出しながら、地元に食を届ける。その輪は、これからさらに大きく広がっていきそうです。

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