マチルダFamilyレストラン
Vol.29
2024/10/31

おにぎり処 てとてを本店

おにぎり処 てとてを本店

駒沢公園のすぐそばに2022年に誕生した、おにぎり処「てとてを」はテイクアウト専門店。早朝からお店をオープンさせ、その日のおにぎりが売り切れたら閉店というスタイルです。そもそも、今の場所のはす向かいに、2020年より間借りでおにぎりのテイクアウト「おにぎり処ぐるり駒沢」を運営していたため、すでにおにぎりのファンは獲得済み。今回は、素材にこだわるおにぎり処「てとてを」を開業するに至ったお話とおにぎりに対する想いを、テトテヲ株式会社の代表取締役、太田由佳さんに伺いました。

栽培期間中無農薬無肥料米のおにぎりは、毎日600~700個完売

「てとてを」のおにぎりの大きな特徴は、すべて太田さんが直接産地などで交渉したものや、信頼できる生産者さんの紹介で出会った有機農法の産物ばかり。
「この事業をスタートする前に、ほぼ1年かけて、愛犬とともに車で全国を回りました。その時に出会い、ご縁の生まれた方から最高の食材たちを仕入れておにぎりを作っています」と、太田由佳さん。
店名の「てとてを」にはつながりを大切にする想いも込められています。

おにぎり「貝柱バター醤油」

写真のおにぎりは、「貝柱バター醤油」。ネーミングだけでおいしさが伝わります。

おにぎりをつくっている様子

「うちのおにぎりは、手で転がしているだけ、最後に紙で締めて包み込み、形を保っているんです」
取材中に、おにぎりを食べてみてくださいと、いただくことに。持った印象はやわらかくふわふわなのに、口にいれた途端コメの一粒一粒の存在感、なのに、崩れてこないというまさにマジック。これは簡単には再現が難しそうです。
「納得のいくおにぎりが握れるところまでいくには、半年はかかりますね。お米の炊き加減、米に対しての塩、具材の分量、そして握り方です」と太田さん。
シンプルにお米と塩と海苔だけでもおいしいことは、一目瞭然。

メニューの一例を紹介すると、
極みの塩 220円・有機南高梅270円・原木椎茸と昆布の佃煮270円というシンプルなものから、大葉と手作り豚味噌330円・有機レモンの天然鰤マヨ340円などアイデアの光るものまで。*価格は取材時のモノです。変更の可能性があります。

さて、2022年に移転オープンという、こちらの場所とはどのような巡りあわせで?
「全国1周の旅を終えたタイミングでキッチンカーを始めていました。その時は、とくにおにぎりではなく、全国で出会った食材を使っていろんなメニューを提供していたんです。でも、その後コロナ禍に突入し、キッチンカーがまったく稼働出来なくなりました。そんな時、地元駒沢の飲食店の方のご厚意で、間借りで始めたおにぎりが1日80個売れ始めたんです。おにぎりにしたのは、その時わたしが持っていた厳選食材が、米、塩、海苔だったということに由来します」

その後、3年くらいで独立できるほどになったそうですね。
「はい、そろそろ独立してもいいかなと思っていた矢先に、近くでクリーニング店を営んでいたご夫婦がビルをリニューアルするというお話を聞き、詳しく伺ったところ『新築でテナントにするのよ、あなたやる?』とお声がけをいただけたという奇跡なんです」

あれよ、あれよと、運命に背中を押された太田さん。

おにぎり処 てとてを本店 太田さん

早速、資金を集めようと動きます。そこで活躍したのが、太田さんの華麗な人脈。
「実は、わたしの前職は夜のお仕事なんです。いわゆるキャバクラ勤務なんですね。しかも12、3年も真面目にやっていたので、まあまあなキャリアでして(笑)。その時代のお客様のご縁で、世田谷信用金庫をご紹介いただき、無事に融資を受けられました。他にも、キャバクラ時代のお客様であった弁護士の方に困りごとを相談したり、なんでも屋をしている方には、おにぎりケータリングの配送も頼んでいたりします」

今までの経験と出会いが詰まっているお店

北海道七飯町出身の太田さんの経歴は、耳を疑うほど面白く印象的。
「函館市の隣町で、農業がとても盛んでした。新鮮な野菜や海産物を食べて育ってきたというのは今では財産ですね」
子供が好きだったこともあり、短大の保育科へ。卒業後は、対極にある沖縄県の保育園に就職。しかし、元々興味があった飲食の世界への夢がふくらみレストランへ入社します。

「沖縄のレストランでお世話になりながらも、東京で飲食の学校へ行き、将来は独立をしたいと夢を持ち始めました。そこで、お金を貯めるために始めたのが夜のお仕事だったのです。沖縄のキャバクラ店で働き、学校の資金を貯めて上京し、カフェ&パティシエの学校に通いながら、生活費のために東京でも夜のお仕事を始めたんです。そこには少しずるい気持ちがあって(笑)東京のおいしいレストランで食事をするにはお金がかかるので、同伴などで食べに連れて行ってもらおうと!」

夢を追いかけているときの想いが強いといろんな方面からアイデアが浮かぶものなんですね。
「そうですね、結果その時のキャリアすべてが、今に活きています。お店のコンセプトには『朝から元気を皆さんに』を掲げているんですが、夜の仕事を終えると、開いているのはほとんどコンビニだけ。周りのみんなもサプリを飲んだり、体調を整えることに必死でした。もちろん私もその中の一人。体調を崩した経験もあり、夜勤明け、徹夜明けの方々にも“おいしいおにぎり”を届けたいなという想いで6時30分のオープンにしています」

おにぎりの写真

取材中、犬の散歩途中の飼い主さんとあいさつする太田さん。駒沢公園が近いこともあり、近隣にはやはり愛犬家の方々が多いんですよね。
「まさに、わたしも犬を飼っているので、このエリアに住み始めました。そのため、お店の前を毎日犬の散歩で顔を合わせるお客様もたくさんいらっしゃいます。早朝オープンだからこそのコミュニケーションですね。地域密着という点ではかなり認知されていると思っています」
そして、店頭販売以外でのもう一つの営業先が撮影現場とのこと。
「うちは、0時以降ピックアップOKなんですね。都内にも様々なお弁当ケータリングがありますが、夜中にピックアップOKなところは意外と少ないんです。皆さん口コミなどで知っていただきリピーターになってくださいますね。インスタグラム以外の広告を何にもしていないので」

リピートしていただくための秘訣みたいなものってあるんでしょうか。
「おにぎりへの愛情はもちろんなのですが、直接会えない分、会えない接客を心がけていますね。手書きのメッセージとかイラストを添えたりとか。結局、食べたもの、触れたものがエネルギーとしてパワーになっていきますよね。だから、配達の受付もシステムは使わず、ショートメッセージで対応しているんです。会話をすることで、お客様のニーズをしっかりと確認したいんです」
まさに、接客のキャリアが活かされています。

水耕栽培葉物サラダのほか、小松菜のおひたし、おから

水耕栽培葉物サラダのほか、小松菜のおひたし、おからなど、昔ながらのお惣菜、函館産の真昆布出汁のシンプルなお味噌汁もおにぎりのお供も販売しています。すべて素材にこだわっているというお店への安心感が近隣のご家族連れや高齢の方からも愛されていることが分かります。

店内の写真
看板と太田さん

生産者、消費者ともに応援していきたい!

おにぎり事業を始めた年は、約700kgだったお米の仕入れが、今では5名の若手生産者さんの仕入れ合計が12tという数字になったそうですね。
「はい、そうなんです。おにぎりは1日30〜40㎏のお米を使っています。店頭でお米の販売もしてます。わたしは、なるべく若い生産者さんから食材を仕入れようと思っているんです。この先もちゃんと農業を続けていきたいと思ってほしいですから」

これからの夢はありますか?
「この地域で何十年も根付くお店にしていきたいですね。あとは、突発的な家庭の事情や身内の不幸があった際にも、力になれるお店でありたいなと思っています。最近自分の身内にもそういったことが起き、そんな時でもお腹はすくし、エネルギーとして何か体に入れないといけない。ほっと安心するおにぎりってすごい味方になってくれると思うんです」

自分の休みは、不定休。「オーダーを見ながら調整しています」と笑う太田さん。
どこまでパワフルで魅力的な女性なんでしょうか。

毎日インスタグラムにあがる「本日も完売です!」の投稿をみるのが気持ちいいお店です。

おにぎり処 てとてを本店

おにぎり処 てとてを本店
住所
東京都世田谷区駒沢5-17-6
TEL
070-3345-1356
営業時間
月~金 6:30~14:00 /土、日、祝日 6:30~
※売り切れ次第終了
定休日
不定休
交通
東急田園都市線 駒沢大学駅から徒歩12分
HP
https://www.instagram.com/tetotewo_onigiri