生産者の声
マチルダ生産者

かんちゃんふぁ〜む
代表 菅野 好さん・齊藤 実さん

かんちゃんふぁ〜む / 代表 菅野 好さん・齊藤 実さん

今回ご紹介するのは、宮城県・仙台市で「曲がりネギ」を栽培している、かんちゃんふぁ〜むさん。あえて曲がるように栽培し、ストレスを与えることで甘みを生み出す、仙台発祥の伝統野菜「曲がりネギ」。東北地方では当たり前にスーパーに並びますが、関東近郊ではまだまだ知名度がありません。代表である菅野 好さん、齊藤 実さんに、畑をご案内していただきつつ、お話を伺いました。(取材時期:6月下旬)

■明治時代に誕生、仙台伝統野菜「曲がりネギ」とは?

諸説あるそうですが、この地域の地下水の水位が高く、普通に長ネギを育てると根腐れしてしまうため、一度掘り出して斜めに寝かせて植え直す方法が使われるようになったとのことです。

「ハウスで寝かせるエリアも増えてきているようですが、この地区では、昔ながらの伝統的な方法で、露地栽培を続けています。曲がりネギは、3月のお彼岸ごろに定植できれば、早ければ6月下旬から7月上旬にかけて寝かせる作業が可能です。ただ、その時期を逃すと気温が高くなってしまうため、次は8月のお盆明けからの寝かせ作業になりますね。
寝かせる際に根をカットすることでネギにストレスを与え、甘みを引き出すのですが、あまりにも暑い時期はネギへの負担が大きすぎて難しいんです。時期を誤ると、ネギが細くなってしまいます」と、菅野さんは語ります。

かんちゃんふぁ〜むの「曲がりネギ」畑

「白い部分が20〜30センチになったら、ネギを引き抜いて寝かせる作業を行います。まずベッドを作り、ネギを一度寝かせて白い部分に土をかけます。すると、ネギは太陽に向かって伸びようとするため、この段階で曲がりができますね。さらに、土の重みを加え、根をカットすることでネギに強いストレスがかかり、それが熟成された甘みを生むと言われています」

菅野 好さん、「曲がりネギ」畑

曲がりネギに向いているネギの品種はあるのでしょうか。
「実際、いくつかの品種でチャレンジしています。『冬月の雫』『龍のぼり』『太陽の祝い』など。その中で最近は、『太陽の祝い』という品種が安定しているので、多く扱っていますね。きちんと、夏も越せますし、伸び率がとてもいいんですよ」

曲がりネギの栽培期間は1年で、通常のネギよりも4か月ほど長くなるため、そのため、生命力の強さが大切になってくるのです。

「曲がりネギ」畑 ※6月下旬で寝かせ対応をしていた畑 ※6月下旬で寝かせ対応をしていた畑

■農業歴20年でも、新鮮な気持ちで日々勉強中

菅野 好さん

「実は昨年から、棒ネギにも曲がりネギにも対応できる「ハイブリッドネギ」の栽培を始めました。その理由は、一昨年の夏があまりにも暑く、曲がりネギが全く育たなかったことにあります。それが本当に悔しかったんです。だったら、気候に応じてどちらにも対応できるような栽培をしようと考えました。そもそも何が違うのかというと、「畝間(うねま)」の広さです。棒ネギは約1メートル、曲がりネギは約60センチ。その中間である2尺5寸(約76センチ)の畝間で栽培を始め、暑さが厳しければ棒ネギに、問題なければ曲がりネギに育てるという、いわゆるハイブリッド型のアプローチです。そしてそれが、見事に成功したんです!」

斬新なアイデアが功を奏したとは、まさにこのこと。このアイデアにたどり着くきっかけをくれたのは、菅野さんが「右腕」と語る齊藤 実さんでした。

「こんな手法でネギを栽培している農家さんがいると教えてくれて、最初は『活字はちょっと読みたくないな〜』と思って(笑)、まずはオーディブルで“耳から”聞いてみたんです。そしたら、『なんだなんだ』と衝撃を受けてしまって」と菅野さん。

そこから、農業歴20年の菅野さんにとって、新たなネギ栽培の世界が広がっていきました。

「以前は、自分が持っている知識で特に問題なく育っていくので、ほかのノウハウには関心がなかったんですよ。でも今では、毎晩YouTube先生からネギの栽培について学ぶのが日課になっています(笑)いろんな生産者の方が様々な方法でチャレンジしているのを見て、いいことはどんどん取り入れています」

「かんちゃんふぁ〜む」のオリジナルマークがはいったキャップ、菅野 好さん

そんな菅野さんの経歴を、簡単にご紹介いただきました。

「農家の長男として、いつかは家業を継がないといけないと思ってはいたんですが、とりあえず一度はどこかに就職しようと考え、市場に就職しました。市場では4年間働きましたが、その間に事故に遭い、半年ほど休職を余儀なくされました。体調がようやく戻ってきた頃、“独立したい”という気持ちが芽生えてきたんです。ちょうどそのタイミングで、後輩から大手コンビニの仕事の相談が来ましてね。そのご縁がきっかけとなり、会社を立ち上げました。自らも栽培しつつ、地域の生産者を束ねて、収穫量を確保し納品するという仕組みづくりからのスタートです。最初はカタカナの会社名だったんですが、『覚えにくい』と言われて(笑)、最終的に『かんちゃんふぁ〜む』に決まりました」

齊藤さんのキャップにも、「かんちゃんふぁ〜む」のオリジナルマークがついてますよね?

「そうなんです。ブランド化を目指してまして、グッズとして作りました。有難いことに、『かんちゃんふぁ〜む』のネーミング浸透が広がっているので、シールや段ボールのほか、資材にかけては、宮城イチと言っていいほどにそろえています(笑)今後は、海外進出に向けて段ボールにアニメのイラストを掲載していくアイデアも進行中です」

「曲がりネギ」畑を背景に、バンクシー風な後ろ姿の齊藤 実さん・菅野 好さん

「今までは、生産者の顔という部分でも、顔出しをあまりしてなくて。バンクシー風にこんな感じの後ろ姿でやってきていたんです」と、おちゃめな菅野さん。
そのお話を踏襲して、シュールな感じで一枚パチリ。グレー&ブルーは偶然の一致とのことです。

「曲がりネギの栽培は本当に手間がかかります。なので、この作業の手間が厳しくて辞めてしまう方もいるんですよね」と伺うと、ぜひ生産者の方の想いも受け取って曲がりネギを味わいたいものです。

マチルダでご紹介した生産者の声