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やまわか農園 立川透さん、茂樹さん

やまわか農園 立川透さん、茂樹さん

今回は、神奈川県三浦市にある「やまわか農園」をご紹介します。代々続く農園を守っているのは、代表の立川透さん(以下、立川さん)と、息子の茂樹さん。取材に伺ったのは2月上旬。ちょうどキャベツの収穫が終わり、大根も終盤を迎えている時期。これから始まるのは、玉ねぎのシーズンです。ただ、「やまわか農園」の主役は、「感激の甘み」「劇的な甘み」 =甘劇®(かんげき)というコンセプトがピッタリの夏のスイカ。なぜ、スイカに力を入れているのでしょうか。「昔からとにかくスイカが大好きなんですよ」と立川さん。「本当に夏は毎日食べていますからね(笑)」と茂樹さん。仲の良い親子の会話にほっこり。畑を案内していただきながら、さまざまなお話を伺ってきました。
やまわか農園

■「やまわか農園」の歩み

代表の立川透さん

まずは「やまわか農園」についてお話を伺いましょう。
「昔はこのエリアにもたくさんの農家があって、それぞれに屋号がありました。うちは『山若』と呼ばれていたんですよ。その屋号をそのまま、農園の名前に引き継いでいる感じですね。当時は、どの家も小規模な兼業農家でした。うちの祖父も農業をしながら漁船に乗ったり、海に潜ったりと、この地域ならではの暮らしでしたね。そして、私自身も、会社勤めと週末農業の兼業時期が長くありました。60歳手前にて、専業になったのです」

先祖代々の土地を守る、立川さん。
「この目の前にある玉ねぎ畑、ここは昔、田んぼだったんですよ。昭和53年の土地改良区域になって、かさ上げして畑になりましたね。でも見ての通り、大きな区画ではないので、便利な機械なんかは入らないんです。すべて手作業での農業になりますね」
確かに、農園までの道幅も車のすれ違いは難しく、畑の場所もまとまってはいない様子。
機械を導入する大規模農業を営む地域の方とは、対照的な動きと言えるかもしれません。

立川透さん、茂樹さんと玉ねぎ畑

ただ、「やまわか農園」の野菜はとにかく旨みが強く、食べた人を惹き付けます。
“なぜこれほどまでにおいしく作れるのか”その理由を尋ねると、こんな答えが。
「私たちは品質にとことんこだわっています。実際に育て、自分たちで食べてみて、本当においしいと感じた品種だけを選んでいるんです。ただ、おいしい品種ほど栽培が難しいもの。家庭菜園なら問題なく育てられても、出荷規模になると病気が出やすいこともあります。それでも、小規模農家だからこそできる挑戦があります。差別化を図りながら、“本当においしい野菜”を届けたいと思ってやっているんです」と立川さん。

しかし、農業の現実はなかなか厳しい状況にはあるとのこと。
「実際のところ、この30〜40年の間、野菜の価格はほとんど変わっていません。しかし、農業資材の価格は高騰しています。それに加えて、気候変動の影響もあります。豊作になりすぎれば価格は下がってしまいますし、人口減少が進む中で需要が伸びなければ意味がありません。収穫量や出荷の流れを読むことは、年々難しくなっていますね。今年は特に雨がほとんど降っておらず、玉ねぎも水不足の影響で生育がやや遅れています」

玉ねぎ畑と茂樹さん

「昨年のキャベツの価格と今年の価格の落差がすごいんです。こちらとしては同じようにキャベツを栽培しているんですけどね」と茂樹さん。

■やっぱり、人よりおいしいものを作りたい

代表の立川透さん

「“好きなスイカを販売しよう”というところから、本格的な販売をスタートさせたんです」と立川さん。
隣にいる茂樹さんが笑いながら続けます。
「本当に親父はスイカが好きなんですよ。収穫が始まると、味のチェックも兼ねてもちろん食べるのですが、親父はほぼ毎日食べています。僕は、さすがに毎日は食べられませんね」

「なんでしょうね。夏は毎日スイカを食べたくなるんです。体がすっきりしないときや、パワーが出ないときも、スイカを食べると元気になれる。ほかのものでは復活できないのに。不思議と体との相性がいいんだろうな、と思います」

そして、スイカ栽培への思いについて、まっすぐな言葉が続きます。
「やっぱり、人よりもおいしいものを作りたいという気持ちがあります。20歳前後の頃にはすでにスイカ栽培をしていましたから、出会いはもう40年以上になります。でも、ずっと好きなんです。スイカやメロンの栽培は“腕の見せどころ”だと思っています。野菜以上に難しい。同じ種でも、育て方次第で味が変わってくるんです」

■素直に野菜が育ってくれれば、おいしくなる

言葉の端々から、作物への深い愛情が伝わってくる立川さん。スイカ栽培へのこだわりについても話してくださいました。
「とにかく、最後まで健康に育てることが何より大事です。収穫まで葉をしっかり保つこともポイントですし、肥料の与え方にも気を配っています。夏の間は毎日畑を見回り、交配も毎日行います。この土地を離れることはできませんね」その責任の重さが、言葉からにじみます。
一方、茂樹さんもこう話します。
「夏はとにかく忙しいですね。スイカやメロンのほかに、とうもろこしや枝豆も栽培しています。その時期は、近所の方にお手伝いに来ていただくほどです」

ビニールハウスの発芽したスイカ

畑から作業場に戻ってきたところで、立川さんが見せてくれたのが、上記写真の左上の場所です。ビニールハウスの中にある筵(むしろ)の下では、スイカが発芽を待っているのだそうです。そして右の写真は、かんぴょうの原料となる植物・夕顔の芽です。
「スイカはね、直接苗にして植えると病気になりやすいんです。そのため、スイカと親和性のある夕顔にスイカの苗を接いでから土に植えるんです。この作業が本当に大変でね。ひとつずつ接ぎ木をして、根が出たらペーパーポットに移植し、それからポリポットへ。最後に畑へ植えるという流れです。時期は3月下旬くらいですね」
気の遠くなるような手間がかかっています。

「苗が畑で成長したあとも、交配やつる引き作業など、ずっと座っての作業が続きます。なので、力仕事はあまりありません。逆に同じ姿勢が続くので、腰にきますね。それに比べると、収穫はそれほど大変ではありませんよ」と茂樹さん。

「うちの朝はそんなに早くないんですよ。というか、家族みんな朝が弱くてね」と笑う立川さん。しかし理由をよく聞いてみると、梱包作業が夜0時近くまでかかることもあるのだとか。それでは朝が遅くなるのも無理はありません。

やまわか農園の立川さんご家族

野菜やフルーツを使った加工品の販売にも取り組んでいる「やまわか農園」。
家族経営だからこそのきめ細やかな対応や、栽培工程への徹底したこだわりを間近で目にし、野菜がおいしい理由を実感することができました。
春にはみずみずしい玉ねぎ、そして夏には甘く実ったスイカ。
これからの季節の味わいが、今から楽しみです。

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