今回は、長野県北佐久郡に本社を構える有限会社トップリバー(以下、トップリバー)をご紹介。2000年に設立されてから、新規就農者の育成・高原野菜の生産・販売に取り組み、全国に優れた若い農業経営者を多く輩出されています。取材では、商品部 部長の鎌田亮仁さんのご案内のもと、独立した生産者の方や、今後独立を目指すスタッフの方にお話しを伺いました。(取材時期:7月上旬)
有限会社トップリバー
https://www.topriver.jp/
まずは、トップリバーが取り扱う品目についてご紹介します。主な品目は高原野菜のレタス、サニー、グリーンリーフ、キャベツ、白菜、ロメインで、それ以外にもズッキーニ、青ネギ、春菊など、多様な野菜を取り扱っています。安定供給のため、各産地をリレー形式で作付けしています。
さらに、2021年より「AIを活用した生育予測システム」の本格運用を開始しました。過去2年間の気象メッシュ情報(約1km四方の気象データ)と生育日数のデータを利用し、気象による生育の変化および生育に影響を与えるパラメータをディープラーニングで学習させ生育日数と収穫日を自動算出するシステムです。
そして、最も注目すべきは、トップリバーの独立支援制度。新卒、社会人、家業継承者、企業の人材など幅広い農業就農希望者を受け入れ、農業経営者になるべく、様々な支援を行っています。継続的な運営をするためには、農業の技術だけではなくビジネスマインド、収益やコストの感覚、組織のマネジメント、人材の育成など、経営者としてのスキルを習得することが必要。これらすべてを身につけたうえで、ようやく安定した農業収入が得られるのです。
この独立支援制度のおおよそのスケジュールは、1年目に基礎の習得、2~3年目に技術力の強化、そして4~6年目に農業経営の実践と独立準備という流れになっています。すでに全国に多くの卒業生を輩出し、トップリバーの取引先生産者となっています。
ふぁーむ しまむら 島村潤一さん Instagram
https://www.instagram.com/farm.shimamura/
まず、最初にお邪魔したのは、「ふぁーむ しまむら」の島村潤一さんが栽培する畑です。
島村さんは、Iターンによりトップリバー就農支援を経て2011年に独立。高原野菜に加え、マンゴー、ブルーベリー、桃などの栽培にも従事されています。取材時の畑には、まもなく収穫が終わるミニロメインがきれいに列をなしていました。
「主には、春先からサニーレタス、玉レタス、キャベツを栽培しているのですが、今年初めてミニロメインに挑戦したんです。ミニロメインは暑さに強い気がしています。3週間そのままにしておいても1個200-250gに仕上がりましたので」と島村さん。
鎌田さんによると、「スムーズに収穫に至ったのは、島村さんはレタスの育て方が抜群にうまいからなんです」とのこと。
端正なスタイルが印象的な宇佐美さんは、現在25歳。トップリバーの独立支援を受けながら、ロメイン、レタス、キャベツなどの栽培に取り組んでいます。
宇佐美さんは、もともと愛知県でIT系エンジニアとして働いていたそうです。
農業への参入のきっかけについて伺うと、
「コロナ禍で完全にリモート勤務になり、毎日ずっと座ってパソコンに向かう生活にストレスを感じるようになったんです。そこで、週末に農業の手伝いを始めたのがきっかけでした。その経験を通じて、“いつか自分でアボカドを育てたい”という夢が芽生えたんです。最終的には、農業を本業にしようと決意し、トップリバーの求人を見て、愛知から長野へ移住しました」と語ってくれました。
現状は、トップリバー全体で生産者の栽培希望をヒアリングしつつも、需要と供給のバランスを見て、品目の栽培量をそれぞれの生産者に割り振りしているとのこと。
「すべてに保険を掛けつつ、栽培のバランスをとっています」と鎌田さん。
「今は葉物で経験を積んでいますが、国産のアボカドを育てることを目標としています。沖縄あたりでスタートできたら嬉しいです。ぜひ、日本のみなさんに食べてもらいたいんです」と宇佐美さん。
鎌田さん曰く、「これからの農業は情報管理がかなり大切です。彼のようなシステムに長けている人材は気候条件なども踏まえた、栽培および生産管理をスムーズに行えると思います」とのこと。
次に、ご紹介いただいたのは、野菜の鮮度を保つのに欠かせない“真空予冷装置”です。
「早朝に収穫した野菜を20分~30分の間、野菜が凍るぎりぎりの温度で冷やします。この手間を加えることで、瑞々しい野菜を遠隔地に輸送することが可能になっているのです」
と鎌田さん。
野菜の芯部の温度を短時間で鮮度保持に適した温度まで下げ、さらに運送会社に託すまでの間も、低温貯蔵予冷庫で保管しているとのこと。
もちろん、トレーサビリティも徹底されており、出荷された野菜の動きをデータ化し、生産者が日々入力している作業記録と結びつけることで、その野菜が栽培された畑でのすべての作業内容、作業者名、育苗中の記録、さらには種の原産国に至るまで、さかのぼって確認することが可能です。
今回の取材を通じて、トップリバーの経営スタイルは、農業従事を希望する方への就農支援、さらにその後の仕入れサポートも含めて、これからの日本の農業を守るうえで必要不可欠なモデルであることが明確になりました。次世代の農業従事者の誕生が楽しみです。