生産者の声
マチルダ生産者

株式会社鈴生(すずなり) / 常務取締役 鈴木靖久さん

株式会社鈴生(すずなり) 常務取締役 鈴木靖久さん

「生産者の声」取材で最多登場、静岡県静岡市の 株式会社鈴生(すずなり) の鈴木靖久さん。
(前回 https://matilda.tokyo/voice/vol018.html
これまでは主に、土耕のレタス生産者としての紹介がメインでしたが、今回はTEN Green Factory株式会社として展開している太陽光型植物工場を中心に話を伺います。どんどん技術革新が進んでいる現代の栽培方法について、様々な視点から教えてくださいました。

■業務用水耕栽培としてアピールしていきたい

「我々の主軸であるレタスの露地栽培を継続していくためにも、施設野菜との共存が必要と考えています。近年は気候変動も激しくなってきていますし」と鈴木さん。
お邪魔した施設は、一般的なハウス栽培というイメージを覆す様相で、まさに植物工場というワードがぴったりな迫力です。

「ここでは、サラダほうれん草、ホワイトセロリ、ルッコラなど一品目、一品種で栽培を行っています。水耕野菜の味は土耕よりも軽やかさが生まれます。そこが食べやすいという方もいらっしゃいますが、私たちは土耕で育てる種を水耕栽培に移行させ、土耕で栽培したままの味を再現することをミッションに掲げています」

栽培を行っているハウス
水耕栽培の様子

水耕栽培は、土を使わず、肥料を水に溶かした、培養液によって作物を栽培します。そのため、土壌病害や連作障害を回避できるという点や除草作業が必要ないというメリットのほか、直接作物の根から吸収するので土耕栽培に比べると作物の成長スピードが速いという特徴があるのは周知されています。

「今ちょうど青々と広がっているのがサラダほうれん草です。この栽培方法ですとサイズに上限なく、大きめサイズにも対応できるので、弊社では35センチと40センチに仕上げています。業務用としてはかなりアピールできるポイントですね。ぜひ注目していただきたいところです」

広大な面積を管理するには、かなりシステム化されていることが見受けられますが、
「そうですね。大元の養液タンクはある程度概算で設定してあり、常に自動供給される仕組みです。ただ、種目ごとの細かな調整は、その時々の成長状況をみて手動で管理しています。その際、必ずブロックごとに収穫できるように成長速度をそろえることを大切にしています。一部でも刈り取れない部分がでてしまうと次の作物を植えることができず、空間のロスが生まれてしまうので」と、効率のよい条件を整えられています。

サラダほうれん草

ナッパ―ランド 」というシステムを導入

次に、見学させていただいたのが、種植え業務。細かな種をスタッフが手作業で粒を数えて入れていました。こちらの作業も慣れた手つきで進められています。

種植え業務の様子

種を発芽させる部屋は厳重に管理されていて、およそ3~4日で発芽するそうです。
その後、パネルへの植え替えを行い、生育がスタートです。

スタッフによる仕分けが行われる様子

収穫は、夏は5時で冬は6時。低温の状態でブロックごとに収穫を行い、そのまますぐに冷蔵室へ移動。そこで、スタッフによる仕分けが行われ、キロ単位でケースにまとめていく作業が始まります。
「とにかく収穫からのスピードが大切ですね。サラダほうれん草はとても傷みやすいので。熟練のスタッフが手早く目視での作業を進め、重さを量ってケースにいれていきます」

株式会社鈴生(すずなり) 常務取締役 鈴木靖久さん

最後に鈴木さんに、水耕栽培と露地栽培のそれぞれの魅力を伺いました。
「もちろん、土地のエネルギーをいただいて栽培する露地栽培は野菜のパワーを感じます。
それは自然の恵みを得ているので、間違いありません。ですが、年々台風災害や、温度の上昇など、過去に例を見ない環境問題も起き始めています。そんな中で、水耕栽培は、自然環境にあまり影響されることなく年間を通して栽培計画を立てられることは大きな魅力です。その上、人材雇用の点で少しハンデをお持ちの方々でもハウスの中での仕事であれば安心して作業を行っていただけるので、雇用の面で少しでも社会貢献に繋がればと考えています」

大手スーパーやコンビニエンスストアなどからの需要が大きいため、「自社所有以外のハウスの委託業務も視野にいれています」と話す、鈴木さん。鈴生グループの躍進はまだまだ止まりません。

マチルダでご紹介した生産者の声